街の酒屋さんは、酒蔵のストーリーや飲み方など、酒に関する様々な情報を発信し、地域の酒文化を盛り上げる拠点です。私たちが普段接するお酒は、主に大手の銘柄や、全国的な知名度のある地酒ですが、街の酒屋さんの品揃えはもっと個性的で、店主の人柄が反映されています。そうした酒屋さんの想いを聞きながら気軽にお酒が楽しめるのが角打ちの良いところです。そんな酒屋さんの個性を、アーティストさんと一緒に楽しむイベントが、「出張カクフェスバスツアー」です。
目次
一路、中央道で府中へ
東京・新宿で合流後、大型観光バスで目指すは府中にあるお酒屋さん。カクフェスのMCでもあるさいとう千晶さんのガイドで出発し、TORAfic☆signALLのお二人、ELBRUNCHさんのパフォーマンスを楽しんでいるとあっという間です。
鴨下酒店
東京・府中の甲州街道沿いで、明治34年から続く歴史ある百年の歴史を持つ「鴨下酒店」。
この日のために用意した日本酒を紹介する、鴨下酒店4代目の鴨下時也さん。
鴨下酒店は、普段から角打ち営業を行っており、ボトルで購入後は店奥のテラス席で味わうことができます。
今回用意されたお酒は、地元・府中の地酒、野口酒造店の「國府鶴 純米」をはじめ、長野県上田の酒蔵・若林醸造がつくる秋らしい「つきよしの 月見に一杯」、北海道七飯町の箱館醸蔵がつくる「郷宝」と、どれも個性的。酒蔵に直接出向き本当に伝えたいお酒を仕入れるという鴨下さんならではのチョイスではないでしょうか。
地下あるワインセラーを見学したり、アーティストの皆さんのライブを楽しんだりと、お酒を片手に楽しい時間が過ぎていきます。
平喜屋
2軒目は池袋にある酒販店・平喜屋。主に飲食店向けの配達を行う業務用の酒屋さんで、常設の小売コーナーはありませんが、お酒に関する様々なイベントや、販売会などを開催されています。
皆さんの前に用意されたお酒は3種類。原料米など、タイプが異なるお酒が並びました。
店長の平喜屋本店長の長島さんが用意した企画は、ちょっとした利き酒体験。同社のグループが製造する日本酒「喜平」の3種類を当てるという内容です。
皆さん、当てられましたでしょうか。
実は、平喜屋には、関係する立ち飲みコーナーがあります。店名は「たちのみや喜平」。同じビルの一階にあり、もとは小売スペースだった場所です。平喜屋の営業をされていた方が退職後、この場所使って飲食店をはじめられました。
利き酒体験を楽しまれた皆さんが続々と「たちのみや喜平」へ。普段、こういう地域密着の立ち飲み店で飲まない方は特別な体験になったのではないでしょうか。
今田商店
三軒目は中央区茅場町近くの今田商店。同店がある新川は、江戸時代、日本各地から船で運ばれてきた日本酒が江戸市中へ運ばれる前に集積された場所で、東京都内におけるお酒の聖地です。いまも全国規模のお酒メーカーや酒問屋の事務所が集まっています。
4代目となる今田健夫さんによるお酒の解説に、皆さん注目されています。
今田さんが選んだお酒は、長野県篠ノ井の酒蔵・西飯田酒造店がつくる「積善」や、柿崎の頚城酒造がつくる「かすみ酒 うすにごり純米吟醸生原酒」、群馬県高崎の牧野酒造「大盃」。3種類の全く異なるタイプのお酒を通して、日本酒の味の多様性を体験いただけたでしょうか。
3軒目ともなると、参加者の皆さんはすっかりほろ酔い気分になり、ツアーを通じて知り合った方同士で和やかに語り合っていました。
一日かけて3軒の酒屋さんで、それぞれのおすすめのお酒を楽しむ角打ちバスツアー。追加でお酒を購入し、お土産にされる方やその場で角打ちを楽しむ方など、皆さん思い思いに過ごされていました。
バスの移動中に休息を取り、次のお店でお酒を楽しむ。バスツアーならではの角打ち巡りが楽しめたのではないでしょうか。
同行したライターの私は、酒蔵巡りとは一味違う、全国各地から集まる多彩な日本酒を味わえる角打ち巡りの魅力を改めて感じました。次回もぜひ参加したいです。
(取材・撮影・執筆:酒場案内人 塩見 なゆ)