年に2回開催の酒屋角打ちフェス。その準備は、実は年間を通して行われています。今回は、フェスで販売する日本酒の原料となるお米の栽培に、私たちも携わっているというお話をしたいと思います。
日本酒の原料はご存じの通り、米と水です。その米作りから、酒屋角打ちフェスの運営メンバーは勉強を兼ねて田植えを手伝っています。
9月に入り、今まさにお米は収穫の頃ですが、田植えは6月に行いました。早朝に東京都台東区の「酒のフタバ」前に集合し、貸切バスで目指すは山梨県富士川町にある、春鶯囀(しゅんのうてん)の蔵元・萬屋醸造店(公式サイト)です。蔵周辺の田んぼでは酒米を育てており、運営メンバーはその一部に浸かり、実際に田植えを行いました。
メンバーは、東京都小売酒販組合や浅草酒販協同組合に加盟する酒販店や、酒類関係者。酒屋さんの常連さんの姿もあり、大変賑やかな集まりでした。また、添乗員として本業でバスガイドの経験もあるさいとう千晶さん(プロフィール)も加わり、バス車内は大いに盛り上がりました。
酒造りは米づくりから
1790年(寛政2年)創業、230年以上の歴史を持つ萬屋醸造店。交流のあった歌人・与謝野鉄幹・晶子が詠んだ短歌「法隆寺などゆく如し甲斐の御酒春鶯囀(しゅんのうてん)のかもさるゝ蔵」から、お酒の銘柄を「春鶯囀」としたそうです。
同蔵は、浅草酒販協同組合向けに「春鶯囀 江戸下町」というお酒を製造しており、その原料となる酒米の田植えをお手伝いしました。
蔵周辺は田園地帯が広がっており、すでに多くの田んぼに稲が植えられています。
全員長靴に履き替え、田んぼの中へ。プロの指導の元、横一列に並び田植えスタートです。
普段デスクワークをしている酒販組合のバックオフィスのメンバーも参加。なれない中腰の作業のため、翌日は皆さん筋肉痛になったとか。
均等に稲を植えるため、目安となる糸を左右から張り、全員でペースをあわせて植えていきます。そしてまた数歩下がって次の稲を。だいぶ進んできました。
イベント主催のTOKYO酒屋魂実行委員会会長で、酒のフタバの店主・関さん。
時間が経つのはあっという間です。田んぼの大半を植え終えたところで、時間となりました。普段やらない田植え作業に、皆さん子どものような笑顔でした。
酒は、その土地の風土を味わうということ
田植え体験の後、昼食を楽しみながら参加者との交流を深めました。取材に同行した私は、酒蔵で直売されている「春鶯囀 純米生酒“活”」をいただくことに。
春に造られ、冷蔵で熟成された生酒は、搾りたてのフレッシュな香りがそのまま閉じ込められており、フルーティーでふくよかな味わいが特徴です。酒屋角打ちフェスで「春鶯囀」が飲める日が待ち遠しいです。
おつかれさまでした!
実はバスツアーの予行も兼ねていました
帰りの車内は、参加者たちの熱気で満たされました。お土産に選んだ日本酒を飲み比べながら、「この香りは酵母の仕業かな?」「いや、原料の米の種類が影響しているかも」と、それぞれの舌と経験に基づいた活発な意見交換が繰り広げられました。
また、車内では、改めて日本酒の製造工程を学ぶ企画もあり、「〇〇という工程でこんな変化が起きるのか!」と、新たな発見に満ちた時間となりました。
現在、酒屋角打ちフェスでは、都内の酒販店を巡る貸切バスツアーを旅行会社と共同で企画・募集しています。このたび実施した本田植えツアーは、その試行的な取り組みでありました。
お酒好きの皆様と、お酒を楽しみながら語り合う、想像を超える楽しいひとときとなりました。今後も、角打ちフェスに関わるメンバーの活動をご紹介していきますので、ご期待ください。
取材・文・撮影/塩見 なゆ (酒場案内人 | Syupo)